Vietnamびじねすりぽーと

ベトナムで生活する若者が綴る、安定的に肉を手に入れるまで。

【読書感想文】異邦人

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フランスのアルベール・カミュによる1942年の小説。

窪田啓作訳。

46歳という若さでノーベル賞をとった天才のデビュー作。

 

概要

何が凄いって、本の裏にあらすじが全部書いてあるっていうね。

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要はストーリーってのは二の次で、

描写などの面白さを楽しむ小説ってことでしょう。

 

よくレビューで出てくる言葉は「不条理」です。

フランス人は不条理が大好き。

 

このあたりは思想として世界中に拡散し、

日本のアングラ文化を育んだとかどうとか。

寺山や唐作品はどちらかというとカフカっぽい気がするけど。

 

 舞台背景

この話の舞台はフランスではなくアルジェリアです。

アルジェリア?

アフリカ?

なんで?

ってなりますので背景を押さえましょう。

 

フランスは1800年代になって、

かのナポレオンが出てきて、暴れて、皇帝になって、失脚して、と

大忙しだったのですが、

失脚後の復古王政が上手くいかず国内の不満がつのりました。

そこで領土拡大しよーぜってなってアルジェリアを侵略し植民地としました。

 

それが1830年。

その後3週間くらいで7月革命が起きるんですが。

(ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」でおなじみですね)

フランス大変だな。

 

その後1962年までフランス領なのですが、

フランスの侵略までアルジェリアの地には

アラブ人やベルベル人が住んでいたとのこと。

劇中に出てきたのはこのアラブ人=先住者です。

 

ちなみにアルジェリアの場所はここ。

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地中海に面しております。

 

アラブ人というと中東のイメージしかないですが、

北アフリカにもいます。

エジプトをイメージすると分かりやすいですね。

 

というわけで当時のアルジェリアは、ヨーロッパからの入植者と、

アラブ人やらベルベル人やらがいる多民族エリアだったということです。

 

当然作者のカミュもアルジェリア生まれのフランス人でして、

この話の舞台となったわけですね。

 

ちなみにサッカーのジダンはアルジェリア移民2世のベルベル人なので、

植民地から現地人のフランス流入という流れもこれでわかりますね。

 

あとベルベル人はバルバロイ(意味不明な言語をしゃべるやつ)って意味らしく、

ちょっと蔑称くさい。

 

 感想

物語は主人公ムルソーの一人称視点で進み、

ほぼテンションが低く、淡々と描かれます。

 

人が怒って罵詈雑言吐くシーンもセリフを書かず、

「彼は私を罵った」

みたいな。

「すでに腕を抉られていた」

みたいな。

 別にそんなことどうでもいいけど、

みたいな。

 

多分こういうとこが好きな人多いと思います。

かく言う私もその一人。

 

 

ムルソーがアラブ人を撃った理由は全然わかりませんし、

物語構造上の強制欠陥イベントという御意見もあるようですが、

この時代には朝起きたら虫になってた人とか、

美しい自然や昔の恋人を思い出して嘔吐してた人がいるので

あまり気にしないほうがいいと思います。

 

Remarks

実は映画化されているらしく、

監督:ベニスに死すでおなじみ「ルキノ・ビスコンティ」!

主演:甘い生活でおなじみ「マストロヤンニ」!

助演:気狂いピエロでおなじみ「アンナ・カリーナ」!

という錚々たる面子なのに、

なんか映画自体凄く地味というか話題にならないですね。

 

やはり映画には向かない小説なんでしょうか。

観たことないので今度観てみたい。

 

あと気になるのは作中出てくるフェルナンデスの喜劇映画。

あれ調べてもわからないんだけど、どんなんだろう?

どなたかご存知の方いらっしゃいましたら情報ください。

観てみたい。

 

 評価 : ★★★★☆