Vietnamびじねすりぽーと

ベトナムで生活する若者が綴る、安定的に肉を手に入れるまで。

【映画感想】サンセット大通り

「サンセット大通り」の映画レビューです。

1950年 監督:ビリー・ワイルダー

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映画歴代ベスト100なら大抵名前があがる名作。

ハリウッド裏側モノの嚆矢らしい。

 

<あらすじ>

サンセット大通りのとある大物の住む邸宅にてプールに銃殺死体が浮いていた。

殺されたのは二流の脚本家で、彼が殺された理由は、今から半年ほど前に遡る。

脚本家のギリスは脚本が売れず貧乏生活をしており、家賃も払えず、車も取り立てられそうになる。

困った彼は知り合いに無心するが、誰も金を貸してくれない。

そんな折取り立て屋に見つかり逃げ込んだ廃墟のような豪邸で、

サイレント映画時代のスター女優であったノーマ・デズモンドと執事のマックスに出会う。

最初はペットの葬儀屋と勘違いされ招きいれられたが、

ギリスが脚本家だとわかったノーマは、彼女が書いた「サロメ」の脚本(主演:私)を手直しするように依頼する。

復活を目論む、かつての栄光が忘れられない老いた女優と、

金の為嫌々ながらも住み込みで手伝う脚本家。

はたしてふたりはどうなってしまうのか!?

 

<感想>

素晴らしい名作です。

手塚のブラックジャックに似たエピソードがあったり、

あとマルホランドドライブをなんか思い出した。

大女優の顔芸がキモいやらかわいいやら怖いやら。

ちょうオススメ。

以上だ。

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とは行かないので、

素敵ポイントを何点か。

 

・冒頭で死体が浮かんでる⇒その理由とは!?という構成の効果

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これ倒置構成別にいらなくない?って気もしますが、

その効果を考察してみます。

 

まず真っ先に考えられるのが

①ミステリー的な要素を入れ、物語に引き込む

という効果。

 

従来であれば時系列で語るところを、

物語のラストから提示し、課程を語る手法ですね。

これはよく使われる構成ですし、効果は大きいと思います。

 

でもそれよりも重要な効果は

②銃を撃つ前後の演技を排し、次の尋問化粧シーンの演技へ行ける

 

これです!

 

通常だと、倒錯し銃を撃ち、

撃ってしまった悲しみで泣き崩れたり、

呆然と立ち尽くしたり、

あなたが悪いのよ的なメンヘラ全開したり、

一通りクローズアップで演技して次のシーンに行くのですが、

そうなると次の尋問を受けながら淡々と化粧するシーンへの移行が難しくなります。

 

何コイツ急に落ち着いてんの?ってなるから。

そこに不自然な意味を見出しちゃう(開き直っちゃったのかなとかね)ので、

それがノイズとなってラストシーンへの繫がりで具合が悪い。

 

しかし冒頭に死体を見せ、ミステリー要素を入れることで、

銃撃シーンが「解」として取り扱われます。

「なぜ撃ってしまったのか(演技)」ではなく

「なるほどこういうことか(構成)」へ観客の視線/思考をシフトできる。

そうすることで、尋問⇒ラストの繫がりや演技が映えるんですね!

 

銃撃前の音楽も徐々に盛り上がる構成になっており、

「はい、みなさんここですよ!撃たれますよ!」

ってなっておりますし、

そこのカット全て引いてます。

銃口にもノーマにもギリスにも一切近づきません。

 

全ては次に繋げるためではないかと思うのです。

 

やっぱりビリー・ワイルダーはすごい。

 

 

あとこの映画のラストシーンは名場面としてよく名が挙がりますね。

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妄想に取り憑かれるあまり、

ニュースフィルムを映画と勘違いして、

プリンセスとして階段を降りてゆくノーマの狂気!

なにその過剰演技!?

なにその手!?

 

これ本来なら階段を降りるノーマの正面から追い続けたほうが迫力あると思うんですよ。

二段下からローアングル気味みたいな。

 

なんであのカットかっていうと、

もちろん一階にカメラがあるからですね。

もっと言うと、あれサイレント映画時代の構図なんじゃないかしら。

 

そんであそこでノーマに近づかないから、

「デミル監督、クローズアップをお願い」

が生きるんですね。

 

そしてクローズアップ映像をぼやかすことで、

ノーマの皺が消え、

まるで若返ったかのように一瞬映り、

夢の中へ消えていきます。

 

シーンを逆算し、最高の盛り上がりを作っているってわけだ。

やっぱりビリー・ワイルダーすごい。

 

 

難点としては音楽がイマイチです。

映画の最初から前に出過ぎている感があります。

あと細かいことですが、

外に出ない老女優が銃を手に入れるという点は全く整合性がありませんね。

 

衣装やセットは素敵です。

映画の裏側を描いた映画ということで、

劇中劇セットの遥か上をいかねばならないので相当凝ってるように見えます。

屋敷内部の絢爛さは白黒映像からでも伝わってきますね。

 

軽妙な会話や気の利いたジョークは少なめですが、

家から出るときに装飾品が引っ掛かるシーンなんかは

あ、ワイルダーだって思いました。

 

本人役のデミルやキートンなど、サイレントの英雄が出演していることも含め、

「映画史に残る傑作」って表現がぴったりです。