Vietnamびじねすりぽーと

ベトナムで生活する若者が綴る、安定的に肉を手に入れるまで。

デフレパードが嫌い

 ※後日追記

この文章はデフレパードの知名度を利用した自分語りです。ほぼデフレパードの話はしませんので、本当にデフレパードに興味を持って検索してきた方は、Naverまとめに戻って10曲聴いていただけると幸いです。

 

 

私はデフレパードが嫌いです。

なんであんなダサい音楽が評価されるのか意味がわかりません。

今日はそんな私とデフレパードの話。

 

海外モノも含めて、真面目に音楽を聴こうと思い立ったのは中学一年生のときでした。

当時はビジュアル系ロックの全盛期で、もっと激しくカッコいいロックを聴きたい、世界をもっと知りたい、人と同じでは嫌だという、中学生らしい欲求が芽生えました。

しかしそうは言っても、当時の住まいは日本の外れの地方都市。どれほど僕が望もうが、手に入る情報量には限りがあります。

今でこそ、聴きたいアーティストをブログなんかで見つけてきて、YouTubeで調べて、2~3曲聴いて、気に入ったらAmazonで購入、

そんなプロセスを30分以内に終えることができますが、当時はそんなものありませんでした。

ネットのみならず、物理リソースでも首都圏と地方都市では凄まじい情報格差がありました。だってタワレコみたいな大手レコード店もないし。

 

ただ運良く、家の近くにTsutaya資本のレンタルビデオ屋があって、そこでCDレンタルもやってました。そんな大きな店ではなかったのですが、どうしてなかなか洋楽の品ぞろえが良かったです。

だから最初はTsutaya先生におんぶにだっこでした。

 

当時(今もか?)の販促企画にとても良いものがありまして、まず一枚のオススメアルバムがあり、それが好きならこのアーティストがオススメって4つくらい紹介してるPOPがついてたんですね。

だから例えばオススメされているNirvanaの「Nevermind」借りて、それが気に入ったら、そのPOPに書いてあるSmashing PumpkinsとかSex Pistolsとか興味を広げて聴けるんです。

そんでスマパンは良いけどピストルズはイマイチかなぁ(中並感)と思ったら、オリジナルパンク勢は回避してグランジ勢を聴けば良いのか、となるわけですよ。

Tsutaya先生ありがとう。

NevermindのPOPでなぜかNeil Young紹介してくれてありがとう。

 

それが12~13歳のころです。1999年。

 

先程ネットが発達してなかったという話をしましたが、全くなかったわけではなく、一応存在しておりましたし、我が家も回線は繋がっておりました。

ただ、いかんせんコンテンツが少なかった。

YouTubeやAmazonはもちろんのこと侍魂すらなかった時代です。ブログって概念すらなかったんじゃないかな。もっと下の世代の方は先行者なんか見てもクスリともしないんでしょうね。

 

そんな当時でも在野の音楽評論家たちの情熱は素晴らしく、好きなアーティストの応援サイトなどは色々とありました。

ただそれらは決して体系的なものではなく、ほんとに好きなアーティストを1つか2つ挙げて絶賛するという、いわゆるファンページ、応援ページ形式のものが多かったです。

だからサイトの作り手の背景がほとんど見えない。

仮にNirvanaを絶賛していたとして、その人がNirvanaとGreen DayとSum41が好きなのか、それともNirvanaとPixiesとFugaziが好きなのか、全然分からないんです。

そういった文脈で、例えば突然Pavementとか紹介されても、音が全く観えないんですよね。当時の私自身のリテラシーの問題も当然ありますが。

何度も言うけどYou Tubeなんかない。

知り合いに同じ興味を持ってる人間もいない。

だからもう、当たり前ですがお金を払って聴くしかない。 

そこでTsutaya先生の出番ですよ。

 

いやぁ、せめてレンタルがあって良かったです。

上の世代は誕生日プレゼントに高価なレコードを買ってもらって、それを擦り切れるまで聴いてたってんですから。

そのレコードが運悪くドリフターズだったりしたら、”あちらの世界”へ踏み入る機会を永遠に失うことになるんですから。

それでも、現在と比べると不便なのは間違いありません。

 

ちなみに当時の私のおこずかいは月千円でした。

ちなみに当時のTsutayaはCD旧譜一週間レンタルのみで1枚300円でした。

もうね、月収の3割ですからね。すべて可処分所得とはいえ、なけなしのお金なんですよ。

だからもう雑誌やら広告やらネットやらで情報を集めて集めて、考え抜いて、ようやく1枚借りるんですよ。そんでそれをテープやMDやCDに焼いて聴きまくるんですよ。

 

当時は聴き始めの中学一年生ですから、理解できないものがたくさんあるんです。集めた情報では大絶賛されているのに、全く良さがわからない。

例えばRadioheadの「OK Computer」。意味不明でした。暗いし、ボーカルキモいし、なんか色々変な音鳴ってるし。

Led Zeppelinの4th。音がなんか古臭く感じて、もうそこでダメでした。

Red Hot Chili Peppersの「Blood Sugar Sex Magic」。音はスカスカだし、メロディが無いからダメでした。

でもなけなしのこずかいで手に入れた音源をおいそれと端に追いやるわけにもいかず、何回も聴くわけですよ。これがわからないのは俺が悪いんだろうって。

でもそのうち諦めちゃって、どうしようもないから棚の奥へしまいました。

いつかその良さがわかる日を夢見て。

 

最初から好きになったのはNirvana、Oasis、Marilyn Manson、Smashing Pumpkins、Green Day、BonJoviとかでした。

いわゆるキッズの為のロックですね。まぁそらそうでしょうよキッズだったし。ジャンルでいうと主にメロディックなオルタナ勢でしょうか。

そうやって人は成長してゆくのです。

いやもちろん今でも聴きますよ。

Nirvanaのレコードはどれも最高だし、Bon Joviの「Livin’ on a Prayer」なんかアリーナロック史上最高のアンセムじゃないか。ライブ行きたい!うぉーっお!りーびおなぷれーや!

 

そんな感じで色々聴いてる中で出会ったのがデフレパードでした。

アルバムは、最高傑作の呼び声高い「ヒステリア」。

曰く、1500万枚以上のセールスを記録したモンスターアルバム。

曰く、ハードロックとポップの垣根を壊した金字塔。

曰く、日本のメタルゴッドことマサ伊藤大絶賛。

 

これは聴いてみるしかないわけですよもう。

マサ伊藤って多分偉い人なんだろう!?

 次はこれや!って思って300円ぽーんと払っちゃったわけですよ。

 

当時はまだボンジョビとかも好きで、産業ロックウェルカムな時期だったので、どんな良い音楽かと期待で胸が張り裂けそうになりながら、家に帰って、CDプレーヤーに入れて、再生ボタンを押すわけですよ。

流れてくるのは1曲目「Woman」

 


Def Leppard Hysteria Full Album - YouTube

 

・・・だ、だせぇ。。。

なんだこの作り物臭い音は。気持ち悪いコーラスは。媚びた楽曲は。女子か。

だせぇよ、だせぇよ。

 

しかしまだ一曲目。最初の曲にトリッキーなものを持ってくることはよくあることです。とりあえずアルバム通して聴いてみましょうと頑張りました。

しかし聴き終えても、感想は「だせぇ・・・」の一言に尽きました。

なんていうか妙に甘ったるい。質の悪い人工甘味料の味がする。赤色106号で着色されてる。そんな音楽に聴こえました。

 

これまでRadioheadなどに感じていた「まだ良さがわからない」感覚と明らかに違う、なんかもう、これダメなんじゃねぇかって、分からない俺はちっとも悪くないんじゃないかって、そのぐらいの違和感を感じたわけですね。

 

しかしそこはなけなしの300円を払って聴いてるわけですから、こっちも引くわけにはいかないんです。何度も聴くんです、きっとこのアルバムがまた俺の知らない世界に連れて行ってくれると信じて。

でもね、何度聴いてもダサいんです。音がウザいんです。

だからもう諦めて、ヒステリアも棚の奥組の仲間に入れてやりました。

 

まぁそんな感じで新しいアルバムが月2枚くらいのペースで増え、よく聴く組と棚の奥組に分類されていきました。14~15歳くらいになると、そういう棚の奥組も結構溜まってました。

その頃には、パンキッシュでポップでキャッチ―な音像にも飽きがきて、もうちょっと「違い」を感じるものに惹きつけられるようになってくるもので、焼いたCDを奥から引っ張り出して改めて聴くようになりました。

すると不思議と耳が対応できるようになっているんですね。

 

「OK Computer」はその瞬間、マイベストの一つとなったし、

Led ZeppelinやRed Hot Chili Peppersもイメージを膨らませて体で聴けるようになってました。

 

その後はもう慣れたもんで、古い名作聴いても、最新の聴いても超楽しい。

だから色々手を伸ばして聴きつづけました。

ちょうどStrokesをきっかけに”ロックンロールリバイバル”なるムーブメントが起きてましたので、それらを同時代的な音として聴くことができました。

またTsutayaで「ポストロック特集」なるものが組まれて、当時最先端の音楽を聴くこともできました。

年が経つにつれインターネットも進化し、これまで以上の情報を手に入れ、おこずかいも増えて、満を持して進出してきたタワレコで輸入盤を購入するなんていうオシャレサブカルボーイみたいなことが出来るようになりました。

夢みたい!

 

その時々で、たまに思い出したように「ヒステリア」を聴いてみました。

でも、やっぱりいつ聴いてもだめ。

何年経ってもヒステリアはダサくて、媚びてて、くだらない音楽。

耳を研ぎ澄ませ、心を寛容にして向き合っても、決して何も響かない音楽です。

 

大学に入ったくらいで音楽に対する興味は以前より薄れ、そこまでほど前のめりに新しいものを探さなくなりました。

逆に何を聴いても頭の中で分類されちゃって、目新しさを感じることができなくなってしまったんだと思います。

それから10年、なんとなぁくタラタラと、たまに音楽を聴いたりしてます。

今は楽ですね。ネットで気になるアーティストの情報を簡単に見つけられて、YouTubeで簡単に見つかって、気になったらITunesで落として、いつでも聴ける。

私がいるベトナムの地でも、それは変わりません。 

 

CD、レンタル、インターネット、MP3プレーヤー、YouTube、そういった様々な要因で音楽の消費スタイルは変化してきました。当然消費スタイルの変化は音楽そのものにも影響を与えます。

CDはコレクターズアイテムや握手券の付録となり、動画サイトで消費されやすくする為に音楽の(デジタルな意味での)情報量は圧倒的に増え、在野のミュージシャンが高BPMの楽曲を量産する時代です。

オリジナルミックステープを苦労して作る必要はなくなり、アルバムのどうでもいい曲はワンボタンで削除、好きな曲だけ繋げてプレイリストを作成できます。曲順だって思うがままです。

 

私はそれを、良い時代だと考えています。

それで全っ然問題ないと思います。

 

好きなものだけ聴けばいいんです。

どうせ、好きなものはどんどん増えていくんですから。

どうせ、音楽に限らずですが、良いもの全てを鑑賞しきることはできないんですから。

世の中の何人が「ユリシーズ」読破してるってんですか!

 

だから「ヒステリア」がいくら売れていようと、一生聴かなくていいんです。

2回聴いて良いと思えないものを、10回も20回も聴くなんて!

ただ、私にとっては「音楽を聴く」という、どうでも良いことに一生懸命打ち込んだ、そういう”証”だと思っとります。

 

今もし全く興味がない音楽に出会っても、2回も3回も聴こうとは思いません。時間の無駄だって思ってしまうので。今更ロックやらポップスに大した発見なんてないですよ。

今初めてデフレパード知ったとしても、YouTubeで代表曲3曲(多分Photograghとかですかね)を2分ずつ聴いて二度と興味を示さないでしょう。

でも15年前はそれでも一生懸命聴くことが出来たんです。 この先に何かあるんじゃないかという謎の向上心を持って。

今、自分が中学生だったとしても、そんなこと出来ないでしょうね。もう時代が違いますから。

 

今でもたまにヒステリアを聴いてみたりなんかして。

そんで思うんです。

あぁダセぇなぁって。

 

やっぱデフレパードは嫌いです。

 

Hysteria

Hysteria

 

 

PS

ダサいって書きましたけど、グラム以降のいわゆる「80年代的ハードロック」の文脈において、楽曲の質やアレンジの完成度がかなり高い作品だとは思ってますし、これを「同時代の代表的音楽」として敬愛している人を否定する気は全くありません。

ハロウィンやリンキンパーク同様、ある瞬間の「ロックの幻想」に最も近付いたバンドの一つだと思います。

単に私がその幻想を共有することは(例えばスネアの音一つとっても)ムリポってだけです。

ってゆーかまぁ好みだよね。